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05 KIICHIRO.H / RYU.H

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ワイナポトシ山頂(標高6088m)を目指す

ワイナポトシ/ボリビア
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◆8月17日 朝 7:10

ビービービ―!
iPadのけたたましいアラーム音で何とか起きれた。
すぐにワイナポトシ(6088m)登山の準備に取り掛かる。

(※挑戦の理由はこちら⇒「ワイナポトシ前日と登山の理由」

すぐに昨日準備しておいた登山服に着替える。

隆の、ゴアテックスズボンと暖かそうなタートルネックの長袖Tシャツ、それにTシャツ
姉貴が置いてった、ニット帽とヒートテックタイツ、登山靴下
友達にもらった、ダウンジャケットとアウトドアブーツ
そして、昨日買ったリャマの毛製のかわいい手袋(150円)

まさに総力戦。

そして、ここに残る隆に別れを告げて、寝床の三菱ディーラーを出る。
集合場所のツアー会社までは、こっから歩きで40分はかかるんだ..
くそ、遠すぎて、登る前からぜぇぜぇいってるぜ

5分遅れで集合場所に到着。
すでに一緒に上る登山客が4人きてる。



ふむふむ、これが今回のメンバーか。
早速、挨拶がてら話したところによれば
先に来てた4人組は、一緒に旅行に来てるベルギーの大学4年生仲間

ジミー(ベルギー):イケメンだけど、ジーパンで参加するという舐めっぷり(笑)
アンドリュー(フランス):ピンクのかわいいニット帽かぶってる。スペイン語担当
イルマ(ベルギー):アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(5895m)の登頂経験あり
ハイン(ベルギー):寡黙なイケメンエリート。同じくキリマンジャロ登頂済み

これに、一人で参加してきた
ゴードン(アメリカ)24歳。テキサス生まれの自然愛好家。職業、山岳救助隊。趣味、ウルトラマラソン。愛称、鉄人。

それと、今回奇しくもアジアを代表することになった
この計6人が、今回このツアー会社からワイナポトシ(6088m)に挑戦する仲間たち。よろしく頼むぜ!

ちなみに、ワイナポトシ登山とは
ワイナポトシ(Huaina Potosi):ボリビアの首都ラパスの真北20km
ボリビアにある標高6088mの山。標高は高いが、ボリビアの首都ラパス(標高3700m)から標高4700mのベースキャンプまでは車で行けて、そこからスタートするから難易度はそこまで高くないので、旅行者などの登山初心者でも本格的な登山を体験できることで人気。しかし、実際は体力、技術、気候などの条件に左右される為、登頂率は50%だとか。基本的に、ガイド、装備、宿泊、食事がフルセットになったツアーで行くのが普通。2種類のプランがあって、3日かけて高地順応や登山練習を済ませてから行くプランと、1泊2日のぶっつけ本番プランがあって、もちろん今回はぶっつけ本番プラン。全部込みこみで11000円と激安なのだ!


しかし、これに挑戦した旅行者のブログを片っ端から読んでると
天候と相棒リタイヤによって登頂断念してる方がなんと多いことか!
どちらも、自分的には行けるのに..という断腸のリタイアらしい。

それでも今回はLOOK初の登山、何としてでも登ってやるよ。
(でもこのメンバー見てたら不安になってきた。初心者ばっかじゃないじゃん..泣)

早速、レンタル用品を借りて、ミニバンに荷物を積み込む。
バックパック、ジャケット、雪用の靴、その裏につけるトゲトゲ、斧みたいのもある!?

左から、ハイン(赤い服)、イルマ(水色)、アンドリュー(ピンク帽)


そして、9:30、ミニバンに乗り込んでワイナポトシのベースキャンプ(4700m)を目指す。
この段階からめちゃ寒そうにしてるイルマ、大丈夫か...



すり鉢状になってるラパスをらせん状にどんどん登っていく。
すり鉢の縁(?)の辺りまで上っただけで、すでに標高4100m。
もう慣れたけど、意味わからない。



そこで一旦買出し休憩になった。
各自、水、チョコ、それにコカの葉(!)を買っていく。
尚、ここでゴードン(米)と話してて、彼の登山経験の凄さを聞いて若干弱気になる。


そして、出発。
いよいよ、ワイナポトシへ向かう。



北に少し走ると、遠くの方にくっきりとした山影が見えてきた。
雪をいただくその先端が、天に向かって鋭く傾斜してる

おい、待てよ。冷静にあの山、デカすぎないか...
そんな不安を感じながらも、この時点ではまだ
これからあそこを目指すんだ!というワクワク感の方が勝っていた。

 

それにベースキャンプまでの道のりに広がる
のどかで、どこか温かみを感じる風景を見てると
上の方のことなんて想像できない。



12:30、ベースキャンプに到着した。
車はここまで、こっからついに登山が始まるんだ。
ただ、その前に昼食休憩があるというのでベースキャンプの小屋の中へ。



右のジーパンはいてるのがジミー
 

6人でテーブルについて待つ。
隣にいた他の旅行会社の登山組がめちゃくちゃ美味そうな昼食を食べてる。
皆、めっちゃ期待してたら、いきなりテーブルにバナナの山が置かれてビビった(笑)
「さすが激安ツアーだね!」と皆で納得。ははは...泣

 

ちなみに、ベースキャンプにいる他の登山組はみんな2泊3日プランの人たちで、
今日はこれから近くでアイゼン(靴裏のトゲトゲ)とピッケル(斧みたいなやつ)の練習をして
今晩はここで泊まるんだとか。

ここで鉄人ゴードンが一言
「普通、一日に1000m以上標高をあげちゃいけないんだ。
それに一回あげても、寝るのは少し高度を下げたところだよ。」

えっ...。ラパスが3700m、今日の目的地のハイキャンプが5130m、
うん、しっかり430mオーバーしてるし、そこで寝るんだよな、俺ら。
不安は募るばかり。

すると、かわいいピンクニットのアンドリューが、何を思ったかいきなり
「登山中に死ぬケースってのはね..」みたいな話をし出した。
おい!やめてくれーー!

(何なんだこのツアー。俺のピースフルな登山ツアーはどこいった...)

昼食を終えると、荷物を背負って出発だ。
目指すは、5130mのハイキャンプ。
ちなみに、そこで仮眠をして、深夜1時に頂上に向けてアタック開始という結構きつ~い弾丸プランなのだ。



最初、いや最初の数歩は調子よく登ってったものの
「あれっ、息が...できない...」
さすがに標高4700mとなると、やっぱり空気が薄い。

それからは、明日のことも考えて
歩数と吸って吐いてのリズムの最適なバランスを探ってく。
そしたら、かなり楽になって、ぐいぐい行けるようになった。

しかし、初っ端から結構きつい岩場だな、これ。
急な登りになると、一歩歩くだけで、窒息しそうになる。
す~~は~~。す~~は~~。



そして何より荷物が重い。靴とかいれて15kgくらいあるらしい。
何が一番心配かって、一年半の運動不足と
それに加えて他のバックパッカーと違って普段重いリュックを背負ってないこと。

前を行く鉄人ゴードン
なぜ君は、余裕でガイドと雑談してるんだ...
俺を含めた他の5人は、もう下を向いて無言の行軍だ。

ゴードンとガイドの会話
ゴードン:「最後にいつワイナポトシを登ったんですか?」
ガイドの人:「昨日だよ。」

........。

それでも、アジア代表の意地だ
気合いでゴードンとガイドに付いてって
休憩中も、立ったまま余裕のフリ...

自分の右側がゴードン↓


余裕で携帯いじるガイドたち

 

ハイキャンプまでは、2時間あまりで着くことになってる。
それでも、最後の方でジーパンのジミーが体調不良を起こして遅れはじめた。
かなりキツそうだ。

ん~可哀そうだけど、これは明日の登頂は難しいかもしれないな。
ならば申し訳ないけど、明日のペアがジミーにならない事を祈るのみ。
明日の頂上アタックは、傾斜70°の雪壁、氷の亀裂や深い穴があるので、ガイド1人に登山者2人がチームになって、互いにロープで繋がって登る。そして、チームの1人が離脱した場合、もう1人も必然的にリタイヤとなってしまうのだ!


「あれっ、でもちょっと待てよ。普通に考えて、友達4人組で2ペア組むよな。すると...」
えっうっそぉおおおーーーー!!!
鉄人ゴードンと一緒じゃん(汗)

いや、組むこと自体は全く問題ないんだよ。いい奴だから
でも、今日の感じからして絶対歩くの早いでしょ。
俺が足手まといになっちゃうよ...

しかも、しかもだ。万が一にも俺がリタイヤしてしまったら..
絶対に頂上まで行けるはずのゴードンまで道ずれに...
いや、そんな惨めで申し訳ないことは絶対避けなくちゃ!


そんな感じで、午後3時過ぎにハイキャンプ(標高5130m)に到着。
狭い山小屋は、すでに他のツアー客でごったがえしてる。
おそらく、50人くらいはいるんじゃないか。





年配の夫婦や、女の人の姿が意外に多いので、少し安心。
これまら俺も大丈夫かな。明日はこのうちの何人が登れるんだろうか。
でも、やっぱりアジア人は俺一人だ。頑張らねば!

ハイキャンプの外に出ると、
向こうの方の雪に明日登るであろうコースが見える。



そっから、少しずつ上に視線を持っていくと
あまりに頂上が遠くて、急で、尖がってることに若干ひく。
まぁ、俺ならいけるはず!



そして、美味しいスープとほとんど味のない激まずパスタの夕食をとり
早くも寝る準備を整える。まだ午後6時。

 

最後に明日の登頂計画のブリーフィングがあった。
それまで談笑していた皆も、少し緊張した面持ちに変わる。
(ちなみに、鉄人ゴードンとのペアが確定した。こうなったらビビらせてやるぜ)

マジで明日あそこに上るのか。
 
どれくらい寒いんだろうか。
 
頂上まで5,6時間、自分の体力は持つんだろうか。
 
ここより息が苦しくなるんだろうし、高山病に大丈夫だろうか。

すでに外は日も暮れ、暗黒の中に高くそびえる頂きを見れば
誰でもめっちゃ不安になるはずだよね?俺だけじゃないよね?

一応、「俺が登れずに誰が登れるんだ!!」ということにして寝袋に入る。
ちなみに、山小屋の二階が寝床になってた他のツアー組全員ここで寝る。

呆然と立ち尽くす、ジーパンのジミー


しかし、寝れん。いや、寝れるはずがない!
だった、今まだ午後7時だよ。

高山病予防薬の副作用ですぐにトイレに行きたくなるし、
それに何より...


下の階で、ガイドの人たちが
どんちゃん騒ぎをしててうるさくて寝れないー!

どんだけ彼らは元気なんだよ。
さすが高地で生活人はちがう。おやすみ~


........................................................................

◆8月18日 午前 00:05

ガサガサという音で目が覚めた。
少し目を開けて周りの様子を伺うと
すでに皆が準備に取り掛かってる。

「えっ、嘘だろ!まだそんな時間じゃないだろ!」
と思って腕時計を確認すると、確かに深夜12時、準備開始の時間だ。

「マジでこれから登るのかよ。だって、めっちゃ暗いし、寒いよ...泣」

一瞬にして絶望のどん底に突き落とされる。
あれだけワクワクしてた登頂アタックも、実際その時になるとこんなにも憂鬱なのか...
マジで、無かったことにしたい気分。

しかし、来てしまったもんはしょうがない。
そう、俺が登れずして誰が登る!だったぜ...
さぁ、戦闘モードに入ろう。闘いだーー!!

急いで支度をする。
と言っても、着替え持参なんて知らなかったから
昨日のままの恰好だよ。

みんなが一階に下りて、靴やら、ペア同士を繋ぐ謎のベルトやらを装着しだした。
やばい、俺も急がなきゃ!でも、これどうやってつけるんだよ!
ってかこれ何なんだよーー!誰か助けてー!

そこに我らが現地人ガイド「イクマン」さん登場!(こっち向いてる人↓)


もう、俺、座ってるだけで、あとは為されるがままにあれやこれやと装着されていく。
何とか自力で試みた靴の装着も、「違うよ~」ということでやり直し。
まさに、赤ちゃんのように為されるがまま。とほほ..でもありがとう。



もちろん、鉄人ゴードンは自力でちゃちゃっと装着完了!
しかも、用具のほとんどが自分の物という気合いの入りっぷり。
迷惑は絶対かけないからね、ゴードン!

そして、マテ茶とカチコチになったパンを腹に押し込んでいると
ガイドのイクマンが「バモス!(さぁ、いこう!)」と外に促してくる。

ついに来たか。

すると、おもむろにゴードンが拳を突き出してきた。
ばかやろう...これで絶対登らなきゃ行けなくなったじゃねぇか。
おう、とこっちも拳を返す。



外に出てみると、思いのほか明るいことに気が付いた。
上空を見上げると、月の光が、ワイナポトシ山の輪郭をくっきり浮かび上がらせていた。
一瞬、その威容に圧倒されそうになる。

そして、今いるハイキャンプから山肌を上の方に向かって
点々と明かりが続いているのが見える。
すでに何組かが出発してるようだ。

どうやら、もうどこの旅行会社とかは関係なく
ペアごとに自由に頂上を目指すらしい。
そして、俺らの番がきた。

あまりに唐突なので、逆に緊張せずに
言われるがままにスタート地点へと移動できた。
でも、ヘッドランプのバッテリーは持つかどうかだけが心配になってきた。
まぁ、この際どうでもいい。

スタート地点までは、ハイキャンプから100m程岩場を通る。
だから、そこまでは、雪用の靴裏のトゲトゲとピッケル(斧)を手で持っていく。

そして、そこでもまたイクマンに為されるがままに、トゲトゲを装着してもらう。
さらに、3人の体を繋ぐロープも装着。これで戦闘準備は全て完了らしい。




イクマン:「さぁ、行こう!」


え、うそでしょ...

で、この靴はどうやって使うの?

で、この斧みたいのは何に使うんだ?
 

何も説明ないんですか~~~!!!!


さすがに焦って、鉄人ゴードンに聞いてみた。

俺:「この靴で歩く時のアドバイスは?この斧は?」
丁寧に歩き方、斧の持ち方、使い方を説明してくれるゴードン。

よし、これで行ける。
気分はもう、植村直己である。

そして午前1:30、記念すべき第一歩目を踏み出す。
あっ!とコケそうになる。
おいおい、この靴めちゃくちゃ歩きづらいぞ...

しかも、意味の分からないことに
スタートから傾斜30°はあるんじゃないかという急斜面だ。
そこを暗い中、いきなりぶっつけ本場なのである。ふむ。

もちろん、転げ落ちたら結構下まで落ちて死ぬだろう。
前を行くガイドのイクマンと俺の後ろの鉄人ゴードンとロープで結んであるものの
果たして、本当に落ちたら2人で支えられるものなんだろうか。かなり怪しいところだ。

一歩一歩。
呼吸に合わせながら
地を這うようにゆっくりと足を前に運んでいく。

すぅ~~(吸って)、はぁ~~(吐いて)のワンセットごとにたった一歩
そのペースでも、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
ダウンも着込んだせいか、思いのほか寒くはないのだけが救いだ。

慣れてくれば呼吸も案外ラクなことに気付いた。
頭痛もない。昨日の疲れもない。これは行けるぞ。


頂上までは、早くて5時間。
今出れば、ちょうど6:45の日の出に間に合うというわけだ。
しかし、日の出をすぎると次第に雪が溶けだしてきて危険になる。
だから、早くいかないと、途中で引き返さざるを得なくなるという。

先を急ごう。

気持ちはがんがんに。呼吸はゆっくりと。
1時間ほど行ったところで、休憩になった。
暗い中を、下を向いて歩いているので、
どんな所を通っているのかもよく分からない。

それに、山肌が大きく起伏しているので、向こうが見えない。
この先どれだけの距離があるのだろうか。
ただただ、前を歩くイクマンの後姿を追う。



10分ほどでまた歩き始める。
少し傾斜が緩くなったと思っても
すぐまた急こう配になる。

急になると横歩きのような形になる。
プラスチックのブーツは、足首がそんなに曲がらないのだ。
そして、これがまた辛い。

少しずつ体も冷えてきた。
こんなに着込んで、心臓もバクバクなのに
それでも、身体が熱くならないのが不思議なくらいだ。


スタートしてから2時間。二度目の休憩になった。
ゴードンとイクマンはそこら辺で立ちションしてるが
俺は、寒くて尿意すらない。

ここまでで標高5500m
まだ半分も来ていないのか...

上を見上げても、頂きはまだまだ遥か上の方。
「これるものなら来い」とばかりの威圧感で俺らを見下ろす。
恐ろしいところに来てしまった...

さらに、進む。


道幅が徐々に狭くなってきた。
狭い所では20cmくらいしかない。

斜面に体をもたれながら、
体操の平均台を渡るように、
足を縦に並べながら少しずつ進む。

それでも、時々、崩れてたり、氷に亀裂が入ってる箇所があるので
そこは思い切ってジャ~ンプ!
と同時にかイクマンがザイル(互いにを繋いだロープ)をグイっと引っ張ってくれる。


3時間半が経過した。

それまでずら~っと続いていた他のグループが
ポツンポツンとしか視界に入らなくなった。
皆疲れてきたのか、進むペースがバラバラになったのだろう。

いや、人のことを心配している場合ではななくなってきた。
手の感覚は無くなり、心臓の鼓動もさらに激しくなる。
体力的には大丈夫なのだが、意識が若干朦朧としてきた。

そんな時に、試練はやってきた。

「えっーーーーー!!!!!!」

どうも前をいくグループが立ち止ってると思ったら、
なんと、傾斜50°はあろうかという、氷の壁が目の前に現れた。

おいおい、こんなのどうやって登るんだよ...と唖然としてると、
イクマンが「ピッケル(斧)をだね、こう持ってね、ザクッとやって登るんだ!」
と、さも当然なように言い放った。(そんなに簡単に言うなよな...)

と同時に、何故か前で休んでるグループを抜かして一気に登りだした!
(おいーー!何故そんなに急ぐ~~)

と言う間もなく、ロープで繋がった俺の体も
強制的に壁に引き寄せられてくーー!!

もはやこうなったら気合いで登るしかない。
少し上の方に斧をぶっさしては
一歩また一歩と這い上がる。

先程とは比較にならないほど
ドキ!ドキ!ドキ!ドキー!と鼓動が早くなる。

そして、10m程を無事這いあがった。
さらに意識が朦朧としてきた。
さすがのゴードンも辛そうだ。

負けてられない。
意地でそのまま歩き続ける。

それでも歩くスピードはガクッと落ちた。
足が言うことをきかなくなり、身体がふらふらと倒れそうになる。
腹も減って、さっきからずっとぐぅぐぅ鳴ってる。


出発から3時間半。
5900m地点での4度目の休憩では
さすがに3人とも座り込んでしまった。



イクマン曰く
「ここまでのペースはかなり順調だよー。いいね!」
確かに前を行く数グループ以外は
後続も含めて、いつの間にか見えなくなってる。

しかし、そこからが地獄...

頂きはもう近いはずなのに
その周りをぐるぐる回ってるだけで、
なかなか近づかない。

そんな時に、まさかの氷の壁が再び現れた...

さすがにこれはヤバいでしょ...
だって30mくらいはあるよ。

先ほどと同じ様に、
ピッケルを氷に突き刺しながら登るのだが
如何せんもう手の感覚がなくて力が入らない。

弱々しくピッケルを振り下ろしたところで
歯が立たず、弾き返されてしまう。

もう、やけくそだ!
少し段差になってるところを手で強引によじ登る!
下を見ると、尋常でない高さだ...

あぁ、やばい...
一瞬からだが浮きそうになる。


その時だ...




「頂上だ!」



ついに、見えたのだ。
まだ、100mくらいはあるものの、終わりが視界に入った。
もう、それより上には何もない。



「あ、空が...」



それまで気が付かなかったが、
空が鮮やかな青に染まり始めていた。
夜が明けたのだ。



それに下からだと、ただ一点の頂点に見えたのが
どうもいくつか頂きがあって、それが稜線(尾根)で繋がっていたのだ。
そして今、その片方の頂点に出た。

あとは、この細い稜線を向こうに渡るだけ。
それですべての苦しみから解放される。


しかし、この稜線の幅なんなんだ...
30cmしかないぞ、しかもこれまでと違って
左右は完全に絶壁となって、はるか雲の下まで続いている。

なんだよこれ...
標高6000mで平均台を渡れというのか...
少しでも風が吹けば、人間なんて簡単に吹き飛ぶぞ。

しかし、もうゴールは見えているんだ。
いや、恐怖を感じる余裕すら、今の自分には無いのかもしれない。
どうせ、たかが10mだと思って、ささっと渡ってしまった。

あとに続くはゴードン。
しかし、彼はまだ正常な判断能力を保っていたのだろう。
さすがに危険すぎると主張し始めた。

ゴードン:「普通に考えてここをそのまま歩いて渡るのは危険すぎる。横に溝とかを作って行った方がいい!」
イクマン:「ダイジョウブー!ダイジョウブー!」

ドン引きするゴードンも、仕方がなく渡ってきた。

あとで聞いたら、「あれは危険すぎる...」と言っていた。
山岳救助隊のプロが言うんだから、そうなんだろう。
さすがボリビアのツアーだ。アトラクション満載だ




そして、俺らは登頂した。









時刻は朝の6:30、ちょうど日の出の瞬間だった。
所要時間は5時間、我ながら悪くない登頂だったと思う。

登頂の瞬間、ガイドのイクマンが抱き着いてきた。
正直、人生で初めて、達成感で泣きそうなったがさすがにそこは我慢した。

ゴードンにも本当に助けてもらった。本当にいい奴だった


頂上からはラパスの町が一望できた。
そろそろ隆も起きる頃かもしれない。



俺らが登ってきた所も見下ろせた。
よくここを登ってきたものだと、自分でも信じられない気持ちだ。



ガイドのイクマン。
最高のガイドだった。ありがとう。




自分より高いものが何もない世界。
雲ですら遥か下の方に見える。
そこに自分いることが信じられない世界だ。




頂上にはすでに10人程が登頂していた。
誰もが静かに喜びをかみしめている。

本当に全員とハイタッチして回りたいくらいだ。
(そんな体力1ミリも残ってないけど...)



お疲れさん、自分!グッジョブ!


そんな喜びの瞬間にも終わりがきた。
狭い頂上では、後続がくるのですぐに退かないと行けないのだ。
と同時に地獄の帰り道が始まった...

登山は上ってから、その後降りるときが一番危ないと聞いたことがある。
気が緩んでしまうからだそうだ。

あれっ?それは俺のことか?
もう、これでもかっていうくらい気がユルユルだよぉ~

というか、もはや体力が残ってないし、
5時間かけてきた道をこれから戻るのか!
しかもあんな急な斜面を!と信じたくないのだよ。

そして、事件は起きた...



頂上からの帰り道
稜線(尾根)を渡ってる時に
滑落しかけた!(笑)....しかも、2回も!


あっ~~~~~~~~!!!!


と足を滑らせて、真っ逆さまに落下...
とはならずに、奇跡的にイクマンとゴードンと繋がったザイル(命綱)で助かったものの
これはマジで冷や汗かいた(いや、笑いごとじゃない!)

さぁ急斜面も乗り切ったぞ
それであとはゆっくり帰れるぜ。

しかし....

え、何故ダッシュで戻るのー!?

帰りは先頭になったゴードンがすさまじい勢いで進んでいく。
ロープで繋がれた俺は、引っ張られるように必死についていく。



足がもつれて転びそうだ。
何で登頂してからこんなにつらい思いしなきゃいけないんだよ..
(いや、マジでゆっくり行こうよ~泣)

ほら、みんな休憩してるじゃん。俺らも...


これから頂上を目指すグループとすれ違っていく。



行きは暗くて見えなかったけど
いたるところにクレバス(穴)があいてる。




イクマンは最後まで元気だね。


もう、俺は死ぬ寸前だよ...


そして、2時間くらいで何とかハイキャンプに戻り付いた。

俺ら:「いや~何とか生き抜いたーー!!」
ゴードン:「俺は、キイチはイケると初めから思ってたぜ。」

よく言うわ(笑)
てか、見ろよ、こんなにダッシュで帰ってきて
まだ数人しか戻ってないじゃないか!



そして、全ての力を使い果たしてパタリと座り込む。
そこにイクマンがスープを差し出してくれた。うますぎるよ~(涙目)

ちなみに、最終的に今日の登頂アタックでは、6、7割の人が登頂したらしい。
天候が最高で、気温も高かったらしい。
てか、これで吹雪でも吹いてたら絶対リタイヤしてたわ。

そして、しばらく外で目を瞑って寝ていた。
俺らのツアーの残り4人が戻ってきた時点で、ベースキャンプまで下りてく予定なのだ。
(ちなみに、残り4人とも、頂上からの降りるときに見たから、全員無事登頂してるはず)

すると、急にトントンと肩を叩かれた。
ゴードンだ。

そして、なんと今から4人を待たずに
先にイクマンと一緒に下のベースキャンプに下りようと言い出した。

え...俺、マジで疲れてるんだけど....
とは言えず、そのままついて降りることに。




ん........??

で、何で小走りで戻るーー??
何の意味があって急ぐんだ!

普通に元気な時でも
こんな標高で小走りはヤバいって!!

朦朧としながら、ついていき
1時間半ほどでベースキャンプ(標高4700m)に辿りついた。




そこで1時間ほど待っていると
残りの四人が下りてきた。
やはり、無事全員登頂を果たしたようだ。

昨日体調不良をおこしていたジミーも
どうにか、イルマが頂上まで引っ張り上げたらしい(笑)



そして、一行はバスに乗って、1時過ぎにはラパスに戻った。
そこで互いの旅の幸運を祈って、俺らは別れた。

たった二日しか一緒にいなかった仲間なのに
共にくぐり抜けてきた困難を思えば、ただならぬ絆で絆で結ばれてる気がする。

だから、「またどっかで会おうな!」と言い合って分かれた。

人生初となる雪山登山という長い一日も、これで幕を閉じた。

では、登頂までの様子を動画でどうぞ。
(ハイキャンプから頂上までは、さすがに取れませんでした)
【旅を追う】No.35「標高6088m!ボリビアのワイナポトシ登山に挑戦!」

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